猫の定期健診では、問診と身体検査を基本に、必要に応じて血液検査・尿検査・便検査・画像検査などを行います。検査内容は年齢、持病、生活環境、症状の有無によって変わるため、すべての猫が毎回同じ検査を受けるわけではありません。
定期健診の目的は、見た目では分かりにくい病気や体の変化を早めに確認し、健康なときの検査結果を記録しておくことです。
猫の定期健診で行う基本的な内容
まず、飼い主への聞き取りと全身の診察を行います。ここで異常が疑われた場合に、血液検査や画像検査などを追加します。
問診
最近の食事量や飲水量、尿・便の回数、嘔吐、活動量、体重の変化などを確認します。室内飼いかどうか、他の猫との接触、与えているフードやサプリメント、治療中の病気も判断材料になります。
猫は体調不良を隠すことがあるため、次のような小さな変化でも伝えてください。
- 水を飲む量や尿の量が増えた
- 食欲が落ちた、または急に食べるようになった
- 吐く回数が増えた
- 寝ている時間が増えた
- 毛づやが悪くなった
- トイレ以外で排泄するようになった
- 体重が減った、または急に増えた
身体検査
獣医師が猫の体を見たり触ったりして、全身の状態を確認します。一般的には、次のような項目を診察します。
- 体重、体型、筋肉量
- 体温や呼吸の状態
- 心音、脈拍、呼吸音
- 口の中、歯、歯ぐき
- 目、耳、鼻
- 皮膚、被毛、しこりの有無
- お腹を触ったときの痛みや臓器の状態
- 関節の動きや歩き方
- リンパ節の腫れ
身体検査では、歯周病、肥満、脱水、皮膚トラブル、心臓や呼吸器の異常、しこりなどが疑われることがあります。ただし、身体検査だけで病気を確定できるとは限りません。
必要に応じて行う検査
血液検査や尿検査は、外見や触診では分かりにくい内臓の状態を調べるために行います。年齢や症状、身体検査の結果によって、検査の種類や項目を選びます。
血液検査
血液検査では、血球の状態や、肝臓・腎臓などの働きを確認します。検査項目によって分かることは異なりますが、次のような変化の手がかりになります。
- 貧血や炎症の可能性
- 感染症が疑われる変化
- 腎臓の働きに関する異常
- 肝臓や胆道系に関する異常
- 血糖値の異常
- 電解質の乱れ
- 甲状腺などホルモンに関する病気の可能性
血液検査で異常値が出ても、それだけで病名が決まるとは限りません。食事や脱水、ストレス、採血時の状態などが結果に影響することもあるため、再検査や別の検査を行って判断します。
尿検査
尿検査では、尿の濃さ、血液やたんぱく質などの有無、尿中の結晶や細胞を確認します。腎臓の働き、尿路の炎症、尿石の可能性などを調べる手がかりになります。
飲水量や尿量が増えた猫、トイレでいきむ猫、血尿がある猫では、尿検査が特に重要になることがあります。採尿方法や持参できる尿の条件は動物病院によって異なるため、事前に確認してください。
便検査
便検査では、寄生虫や消化状態の異常などを調べます。下痢が続いている場合や、子猫、多頭飼育の猫、外に出る猫では、獣医師が便検査を勧めることがあります。
検査には新しい便が必要になる場合があります。持参する場合は、採取方法や保管方法を病院に確認しましょう。
画像検査
身体検査や血液・尿検査だけでは判断しにくい場合、超音波検査やレントゲン検査などを追加します。
- レントゲン検査:骨、胸部、腸内のガス、結石などの確認に使います。
- 超音波検査:心臓や腹部の臓器、腫れや構造の変化などを確認します。
画像検査を定期健診で毎回行うとは限りません。症状、年齢、既往症、血液検査などの結果をもとに必要性を判断します。
定期健診で確認できること
定期健診では、現在の病気の有無だけでなく、前回からの変化も確認できます。特に、猫に多いとされる次のような問題を疑うきっかけになります。
- 肥満ややせ、筋肉量の低下
- 歯肉炎や歯周病
- 腎臓の機能低下
- 糖尿病が疑われる変化
- 甲状腺の病気が疑われる変化
- 尿路の炎症や結石の可能性
- 心臓や呼吸器の異常
- 皮膚病や寄生虫
- 関節の痛みや運動機能の低下
ただし、健診で異常が見つからなかったからといって、その後も病気にならないとは限りません。健診はその時点の状態を確認するもので、食欲不振や呼吸の異常などがある場合は、次の健診を待たずに受診が必要です。
年齢や状態で検査内容は変わる
子猫、成猫、高齢猫では、注意する病気や必要な確認項目が異なります。また、持病がある猫は、健康な猫より詳しい検査や頻繁な経過確認が必要になることがあります。
| 猫の状態 | 健診で確認する主な内容 |
|---|---|
| 子猫 | 成長状態、寄生虫、ワクチンや生活環境、先天的な異常の有無など |
| 成猫 | 体重、歯や口、皮膚、尿・便、生活習慣に関わる変化など |
| 高齢猫 | 腎臓、甲状腺、血糖、筋肉量、関節、認知機能など |
| 持病や症状がある猫 | 病気に応じた血液検査、尿検査、画像検査、治療効果の確認など |
年齢の区切りや検査の頻度は、猫の状態や動物病院の方針によって異なります。健康な猫でも、少なくとも定期的に診察を受け、検査を追加する時期を獣医師と相談すると判断しやすくなります。
健診前に準備しておくこと
健診前は、猫の変化をメモしておくと診察に役立ちます。体重、食欲、飲水量、尿・便、吐いた回数、薬やサプリメントの使用状況などを記録しておきましょう。
- 気になる症状が始まった時期
- 食事や水分量の変化
- 尿と便の回数・状態
- 現在使っている薬やサプリメント
- 過去の検査結果や治療歴
血液検査の前に食事を控える必要があるか、尿や便を持参できるかは、検査内容によって異なります。絶食などの準備を自己判断で行わず、予約時に動物病院へ確認してください。
ワクチン接種と定期健診は別のもの
ワクチン接種は感染症への予防を目的とするもので、定期健診の検査とは役割が異なります。ワクチンを受けるときに診察が行われることはありますが、血液検査や尿検査まで毎回含まれるとは限りません。
ワクチンの相談と同時に健診を受けたい場合は、予約時に「身体検査だけか、血液検査なども希望するか」を伝えておくと、必要な時間や準備を確認できます。
猫の定期健診で最初に確認すること
まずは、猫の年齢、持病、最近の変化を伝えたうえで、今回必要な検査内容を獣医師に相談してください。基本は問診と身体検査で、必要に応じて血液・尿・便・画像検査を組み合わせます。
健診結果は一度きりの数値ではなく、過去の結果との変化を見ることも大切です。検査結果の意味、追加検査の必要性、次回の受診時期を確認し、食欲不振や排尿困難など急な異常がある場合は定期健診を待たずに受診しましょう。







